ひねもすのたり

日記のような、つぶやきのような、そんなブログです。夫が末期がん患者です。

病気のイメージ

がんって告知されると、どうしても「死」を意識しますよね。

 

nonbiring.hatenablog.com

前に、がん患者=死、と連想させるのは良くないのではないかと書きました。

そう書いたけど、告知された本人はやっぱりショックだし、「私、何年生きられますか・・・?」みたいになるのはごくごく当たり前のことであると思う。

ただ周りの人が、死を意識した発言は控えた方が良いのではと思うだけでして。

 

どうしたって「イメージ」はつきまとう。

それは病気に限ったことではないが、ここでは病気に対するイメージの話をしたい。

 

私自身、関節リウマチという病気を持っている。

発症はもう15年ほど前になる。とにかく痛かった。でもなにより、先々関節が変形して、思うように動けなくなる可能性があるってことに絶望した。

でも、15年経った今、私は元気だ。

ハイヒールの靴だって好まないけど履けるし、マラソンだって興味はあんまりないけど、担当医曰くやってもいいらしい。ちょっと手首が曲がりにくいことはあるけど、あとは不自由なく暮らせている。

 

なぜか。

私は「たまたま」薬が効き、寛解状態に持っていくことができたからだ。

この「たまたま」は「運良く」とも言える。

神様に気に入られるほどの良いことをしたとか、医師に特別な治療を施してもらえるほどの袖の下を渡したわけでもない。

発症後に医師から処方された薬が私にはとても効いたのと、その頃ちょうどリウマチの新薬が承認ラッシュでいろいろな薬の選択ができたこと、私の身体が薬の副作用に耐えうる状態だったこと、医師の薬の匙かげんが絶妙だったこと。

この中に私自身が努力したことは、ひとつもない。あえて言えば、淡々と病院に通ったことくらいか。リウマチ患者さんの中には、怪しい民間療法にすがって、病院に来なくなる人も多くいるようで、私自身もたくさんのお誘いを受けた。が、私は淡々と病院に通い続けて、淡々と検査結果を聞き、淡々と処方された薬を飲み続けた。だから今の私がいると思っている。

おそらくがん患者さんの中にも、いろいろな民間療法からのお誘い、あるいは自分自身で積極的に民間療法を選ぶ場合もあるかもしれないが、その事についてはまた別の機会に。私は民間療法全てを否定しているわけじゃないということだけ、書いておきます。

 

その「たまたま」「運良く」寛解になることができたことを、私は一時期「自分が成し遂げたこと」のように思っていた。でもよくよく考えたら違うわけで、あの頃の自分に何か伝えることができるとしたら、「悲劇のヒロインになるなよ。」ってことかな。

あと、「周りの方に感謝しようね。」かな。

ま、でも確かに辛かったからね。病気だった自分をそうやって俯瞰で捉えることができるようになったのも、今自分が元気だからに他ならないわけだし。

 

ちょうどリウマチになって4年目の頃。

私のリウマチは急性期を終え、薬もボチボチ効き始め、わりと普通に動いて生活できるようになっていた。辛いのは買い物。荷物を運ぶのはリウマチ患者にとって、けっこうキツイ労働です。それでもなんとかやれるようにはなっていた。

上の子が小学生になった頃でもあって、クラス役員を引き受けていた。病気のこともあって、専業主婦だった私に白羽の矢が立つのは当たり前っちゃ、当たり前。

でも、通院で役員の集まりに行けないなんてこともあるわけで、同じ役員仲間には私がリウマチ持ちだってことは伝えた。隠したいことでもなかったし、特に深く考えることなく。

そしたらその役員の中の一人が、

「偉いわね〜。病気持っていても役員引き受けてさ。〇〇さんも確かリウマチだって聞いたけど、あの人、何にもやらないのよね。リウマチだからやれませんって言っていたけど、あれ、ただ単にやりたくないだけじゃない?」

ってなことを言ったんですね。それに周りも同調して「確かにそうだね〜。」みたいな空気になっちゃって、私はちょっと辛くなってしまった。

 

まさか私のリウマチと他の人のリウマチを比較されるとは思いもしなかったので、一応個人個人でリウマチの具合も治療効果も違うんだって話はした。したけど、「リウマチでもやれる人はいるわけだから、やろうと思えばできるはず」的なイメージを彼女たちの頭に植え付けてしまったことは確かだ。

本当に正しく伝えるって難しいと思う。

 

この時に彼女たちは、リウマチという病気を、目の前にいる患者代表の私という存在からイメージした。多分無意識のうちに。

リウマチ患者って実は日本に80万人はいると聞いているが、皆さんの周りにゴロゴロ転がってはいないだろうし、あんまりテレビでも取り上げられないから、イメージが固まってない。だからあの時は私がそのイメージ代表になってしまった。

でもたいていは、リウマチと聞けば、手の変形や杖をついて歩くおばあちゃんの姿を想像し、温泉の効能に大抵書かれていて、入れば治るというイメージだろう。

実際は、発症は30〜40代が多いし、温泉では治らない。

 

がんも死に直結するイメージからなかなか脱却できない。最期は痛みに耐えながら息を引き取るイメージもまだ根強い。抗ガン剤を使うと髪が抜けるイメージもあるし、吐き気のイメージもある。

これも実際にはすぐには死なないし、最近は上手く付き合いながら普通に暮らしている人もいる。緩和ケアも充実してきており、最期に近い人だけのものじゃなくなっている。髪が抜けない抗ガン剤もあるし、吐き気がないパターンもある。

 

結局はひとりひとり、個人で全く違うし、病気のイメージで括ってしまわないようにと思う。イメージばかりは自身の努力ではどうにも変えられないということを頭の片隅に置いてもらえたら。

勝手なイメージで決めつけられて辛い思いをする人が減るといいなと思う。